もう…辺りは暗くなったにも関わらず、才蔵は一向に帰って来ない。
翡翠も何かを感じたのか…祠の戸からずっと外を見ている。

一瞬、かすかに血の匂いが風に乗って匂ってきた。
この血の匂いは忘れるはずがない…才蔵の血の匂いだった。


私はその匂いをたどり、祠から飛び出した。
『才蔵!!!』
「ははさま!!翡翠も行く!待って!!」

翡翠を抱え、再び駆け出す。
だんだん血の匂いが濃くなってきた…汗が止まらない。
『お願いだから!無事でいて!!』


そして…目の前には才蔵の着物を着た、才蔵だとは分からないほど刻まれた肉片。

膝から崩れる様に崩れてしまった。
本当にコレは才蔵なのだろうか…

翡翠がいきなり私の腕の中から飛び出し、一本の木に向かって走り出した。

『翡翠…どうしたの?』
「ちちさま!!ははさま!ちちさま!!」
『えっ!?才蔵!!』

急いで翡翠の元へ行くと…木も根元に才蔵の首が…。そして翡翠も手には翡翠色の髪飾りが握られていた。
「落ちてた。」
『それはね…父様が翡翠の為に買ってきた髪飾りよ…』
「ちちさま!!」
『そう、父様よ。』

私は才蔵の首を着ていた着物に包み…祠へ帰り、祠のそばにお墓を作り…翡翠と共に箱に入れ埋めた。


気付いたら、辺りに日が差し込み…明るくなっていた。
翡翠は泣き疲れて腕の中で眠ってしまった。


これから、どうしよう…
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