ワタシノタイヨウ
頬を包んでいた手を離し、彼は私に椅子に座るよう勧める。


彼は引出しから煙草を取り出すと口に銜え火を点けた。


『中西先生って、結婚するんだ』


「あっ、これはまだ秘密だから、他の人には言うなよ。」


窓に向かって煙を吐いていた彼は私の方をちらっと見て言う。


『は~い。誰にもいいません。』


私は中西先生が彼と関係ない事がわかり、ご機嫌になっていた。


「ククッ、わかりやすいやつ…」


『えっ、何か言いました?』


「いや、何でもないよ。」


彼は私を愛おしそうに見つめる。


私はその瞳にドキッとしてしまい顔が熱くなるのを感じていた。


不意に彼の手が私の頬に触れる。


私はドキドキしながら彼の瞳を見つめると、ゆっくりと顔が近付いてきた。


そっと彼の唇が重なる。


触れるだけの優しいキス。


それは少し煙草の香りがした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



彼は仕事をしながら私のお喋りを聞いてくれている。


『あぁ、もうすぐ冬休みだぁ♪』


(その前にクリスマスだけど…)


私はさりげなく話しを出そうと、画策していた。


「いや、その前に…」


(えっ、先生気がついてくれた?)


私が期待を込めて次の言葉を待っていると…


「期末テストあるだろ。」


(ガクッ…そっちか。)


『アハ、そうですね…』


私はがっかりした表情で俯く。


彼はそれをちらっと見ると


「この前のテストはさんざんだったからな。今回はいい点取れよ」


私の頭をポンっと叩くとニヤッと笑った。



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