ワタシノタイヨウ
ある日の休み時間、廊下を歩いていると、誰かに後ろから呼び止められた。


「鈴原カスミ…ちょっといいか?」


『はい?』


振り返ると彼だった。


(えっ、青山先生!今私の名前呼んだよね…覚えてくれてるんだ。)


なんだか、嬉しくなって自然と笑顔になる。


「次、お前のクラスの授業で使う実験道具運ぶの手伝ってくれないか。」


彼の声を聞いていると、私の心臓がトクンと音をたてて鳴った。


それを悟られないよう笑顔で


『いいですよ。』


と答え、彼の後をついて行く。


準備室に入ると彼は、


「そこで待ってて。」


と言い道具を揃え始めた。

私が彼の横顔を見つめていると、


「何?」


と不意に彼が口を開く。


私は少しびっくりしたけど、思い切ってあの日の事を聞いてみる事にした。


『あの…先生…始業式の朝、桜の木の下で会いましたよね。って覚えてないかもしれないけど…私先生の事見たんです。ほら、空を見上げてて…』


すると彼は話しを遮るように、


「人違いじゃないか…。じゃあこれ持って。」


と私に荷物を渡し部屋を出た。


『えっ?』


予想外の言葉に驚き、私はあわてて彼の後を追う。


声をかけようとしたけど、話しかけるなオーラが出ていた。


私はその後ろ姿を見つめながら、何も聞けずにただ彼の背中をじっと見つめていた。


あの日見た彼は、絶対先生だった。なぜ彼は隠すのだろうか…。


私の心はモヤモヤしてすっきりしない。


私は、授業中ずっと彼を見つめていた。



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