夏の約束
その時、目覚しがピピッという軽快な音を響かせた
いつもの時間になったのだ
「よし
じゃあね、じいちゃん
また明日」
俺は宿題を抱え、急ぎ足で中庭へと向かった
中庭に着くと、翔はあの木の下に立っていた
俺はそれに近づき、声をかける
「翔、何してるんだ?」
「勇希、あそこ」
翔は木の上の一点を指差した
俺はその方向を見る
そこには猫がいた
例によって降りられないようだった
「どうしようか…」
「どうするって、別に俺が登ってくるよ」
俺はそう言いつつ、木の枝に手をかけた
「な、何言ってるの
危ないって」
「大丈夫大丈夫」
木登りが得意な俺は手馴れた技術で登って行った
あっというまに猫のもとへと行って見せた
猫の乗っている枝に跨る
「よしよし、こっち来い」
猫に手を伸ばし、少しずつ自分の近くに呼び寄せた
そして指先が柔らかい毛に触れた瞬間、ひょいと抱き上げた