優しい旋律

彩りが変わる時。

その日から、彼女の目に映る先生は大きく変わった。


苦痛でしかなかった練習が、気がつけば日々の楽しみになっていた。


あんなに嫌だった休日練習も、何時の間にか1番に部室に来て練習するようになった。


練習中に先生から放たれる冷たい言葉の中にも、


厳しさ以外の何かを感じるようになった。


鋭さの中に隠れる、本当の優しさ。


無表情の仮面の下に、彼女はいつの間にか暖かな微笑を見ていた。


あの日の放課後、夕陽に溶けるように浮かんだ、優しい微笑み。


あの笑顔を思うだけで、練習を頑張ろう、そう思えた。


そして、彼女は放課後練習のとき、いつもあの音を思い出した。


優しく響く、あの旋律を。


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