狙われし王女と秘密の騎士


男が飛んできた店を見ると、髪の長い艶やか美女が仁王立ちでこちらを、というか、地面に転がっている男を睨みつけている。
どうやらこの美女が男を突き飛ばしたようだ。


「いいかい!二度とアタシの前に現れないで!」
「うっ。だからって殴るこたーねーだろ!」


美女に睨まれて怒鳴られた男は顔を赤らめながら体を起こし、美女に悔しそうに、悲しそうに怒鳴り返した。
男は体がゴツく、凄く大きな巨体をしているが、美女に睨まれるその姿はとても切ないものがある。


「俺様の何が嫌なんだ!? 何が不満なんだっつーんだ!?」
「全部」
「!!!?」


間髪入れずに即答された、そのセリフに男は固まる。
というか、痴話喧嘩はいいけど、謝ってほしい。
人を吹っ飛ばしといて無視しないでと叫びたかった。



「立てるか?」
「あぁ、うん」


のっそり起き上がろうとしたら、カイルが手を差し出した。それを掴んで立ち上がる。
衝撃はあったが怪我はしてないみたいだ。
ほっとし、パンパンと服の埃をはらった時、店の美女と目が合った。
美女がハッとしたように私を見てグイッと引き寄せた。


「私はねっ!」


と、美女にギュッと腕を掴まれる。





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