狙われし王女と秘密の騎士
そんな私を見てカイルはニヤッと笑う。
「俺がいなくて寂しかったのか?」
そう言われて顔が赤くなる。心細かったのは事実だが、言葉にされると恥ずかしい。
思わず動揺しながらも思いっきり否定した。
「ち、違う!」
「照れんな。まだまだ寂しん坊のガキだなぁ」
お見通しと言うように余裕の笑顔を見せて、楽しそうに手の縄を解いてくれた。
途端に自由になる手。
少し手首が赤くなったが一気にほっとして力が抜けそうになる。
「さて、抜け出すか」
立ち上がるカイルに私は慌てて声をかけた。
「待って!」
「ん?」
「あの……取り返さないといけない物があるんだ」
そう。大切な短剣。あれだけは何としてでも取り返したい。
大切な短剣が奪われたと伝えるとカイルは「ふぅーん」と頷いた。
「じゃぁ、行くか。小屋の隣にアジトみたいな建物があった。そこに居るだろ」
アッサリそう言って、小屋の扉に手をかける。
その行動に再び慌てた。
「待って!外には見張りが……!」
部屋の外には見張りがついているはずだ。カイルが忍び込んできたのなら、堂々と入り口から出入りするのは危険であった。
しかしカイルは躊躇いなく扉を開けた。
一瞬、危険に対して体が強ばるが、それも僅かだった。
居るだろうと思われた人影はなく、カイルの足下に黒い物が横たわっている。
「倒れてる?」
そこには地面に倒れている見張りの男二人。