狙われし王女と秘密の騎士

「カイルにはそれが出来るんだね?」


通行証は理由をつけても発行まで一月以上はかかる。現状、手続きをしているものも増えているようだから実際はもっとかかるだろう。
それをたった数日待てだなんて。


「不可能ではない」


サラリと言ってくれる。
しかし、さっき聞いた話で本当にカイルが何処かの国の政に手を貸しているなら不可能ではないのだろう。
きっと何かしらつてはある。
そして、普通、一般国民が亡命に行ったとしても阻止されるか強制送還されるか難民扱いにされるかなのに、それをきちんと亡命として受け入れてもらえるあてがあるということだろう。

しかし、近隣の国はサルエルの圧力や手が回っているようだった。
実は、王宮を出て、身を隠したあの夜。
私は近隣国に助けを求めることも考えた。近隣国なら私の顔もわかるし、助けてくれるかもしれないと。
しかし、サルエルは先に近隣国に根回しをしていたのだ。
それは近くを通る人々が何度もしていた噂で知った。

だからこそ、近隣国に行くのは躊躇われたのに。


「どこに亡命するんだぁ!?」
「そうだな。俺は西の国の出身だ。あそこなら何とかなるかもしれない」
「西の国……ナリエル王国のことか?」


いつかは一緒に行こうとお父様言っていた国だ。
カイルはナリエル王国の出身だったのか。
どうりで髪が茶色なはずだと納得がいく。ナリエル王国は茶色や水色の多彩な色彩の瞳に茶系の髪が特徴だ。
あそこは豊かな大きな国だ。私は行ったことなく、国王と面識もないが、父は訪問したことがあるから少なくとも交流はあるはず。
ナリエル王国ならもしかしたら。


「行く」


ナリエル王国なら希望は見えるかもしれない。



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