ますかれーど

--愁一side--

八分月の暗闇に

鋭く紺色を潜ませて

僕は見守っていたんだ。

ずっと、ずっと‥。




蒼銀のあの人が、あの子に希望を与えていた。

そして、笑顔を見せていたという。

あの人の話す“女の子”に、あの子がだんだんと惹かれているんだと確信した。


だから、この高校に入ったんだ。

あの人も、その奥さんもこの高校だったというから。

ならば、僕の1つ年下だというその女の子は、十中八九この高校に来るだろう。

そして、あの子も。


見つけることは容易かった。


生徒会長として入学式の挨拶を述べた時、壇上からでもすぐに分かった。


蒼銀のあの人と同じ、綺麗な蒼い瞳をしていたから。



真っ直ぐなその瞳はとても真っ暗だったけれど。


ねぇ、君なら‥

あの子のココロを開いてくれるかな?

あの子の笑顔を取り戻してくれるかな?



これが、僕にできる、
精一杯の償いだよ。




ーーーーーーー‥




……でも

君が本当は誰を追いかけているのか‥それは一目瞭然で。

あの子じゃないことも分かっていた。



でも、あの子を光へと導けるのは、君しかいないんだ。


頼む。


あの子の側に居てやってくれないか。

あの子の名前を呼んでやってくれ。


僕じゃ‥だめなんだ。


君は、あの子の希望。

君のその光で、あの子を照らしてくれ。

闇からすくい上げてくれ。


あの子の手に入れた小さな光を、泡沫なんかで終わらせないでくれよーーっ!!



だからこそ、

君のナカに“誰”が居るのか、ハッキリさせる必要があったんだ。

自覚させる必要があった。





もう1度、仮面を被ってくれないか。


それが、どんなに哀しい道化でも……


あの子の光となるならば


僕は、どんな悪魔にだってなれる。




さぁ、お姫さま?

君は‥どうするのかな?





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