ますかれーど
朝焼けが、すごくすごく眩しくて。

お風呂場の湯気に反射しては、柔らかく美しく散らばった。



「俺、これは夢なんじゃねえかって思ってる」



低い声が綺麗に響く。



「これはまだ、マスカレードの続きで、仮面が見せてる幻想なんじゃねえのかな?」



声が、揺れてる。



「目が覚めたら、お前は隣には居なくて‥。他の男んとこに行っちまうんだ」



優しい瞳を悲しそうに光らせながら、



「やっと手に入れたのに。ずっと、ずっと好きだったのに」



ゆらゆらと揺れ動く。



「俺‥恐ぇよ。目を覚ますのが、恐ぇ」



朝陽が湯気と同化して、金色に私たちを包む。

それは、穏やかで優しい色。



「玄‥」



震える身体は、寒いから?



「私は“ここ”に居るよ」



ぎゅっと抱きしめた大きな身体。

子犬みたいに震えてた。



「ずっと、ここに居る。ずっとずっと、玄の隣にいるから」



冷たくなってる頭を抱えながら、そっと撫でる。



「大好きだよ。玄‥」



誰かを好きになれば、不安になるのは当たり前。

でも、それを少しでもなくしてあげられたなら‥。


ドキドキとただ波打つだけだった鼓動は、トクントクンと優しくなった。

肌に伝わる玄の体温が、とても心地良いの。



「なぁ‥」

「ん?」



玄の声が、穏やかに私の鼓膜に響く。



「苦しい‥」

「え?」



玄の頭を解放すると、ニンマリとした紫の笑顔がそこにあった。



「やっぱお前、デカくなったな。胸」

「ーーーっ!!」



その後、玄の左頬に真っ赤なもみじが出来たことは言うまでもなく。



「痛ってえ‥」

「自業自得っ」

「殴ることねえだろ」

「玄があ‥あんなとこ触るから悪いんでしょっ」

「悪ぃのかよ」

「悪い!」

「あーぁ。さっきはあんなに可愛かったのになぁ。な、もっかい言って?」

「お前になんかもう一生言うかっ馬鹿!」

「んだとう?言えっつってんだろーが!このボケナスがっ」

「言うかっ!このおたんこナスビがぁっ」



パジャマのボタンを閉めながら、大声でまたケンカ。

結局はこうなるんだ。


そして、それを止めるのはーー‥



「う、る、さーーいっ」



バァンっ!と勢いよく洗面所の扉が開き、恐ろしい形相で入って来た‥鬼。
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