ますかれーど
まだ茜色が微かに残る、群青色の空。


青々と茂った木々の天蓋から零れるのは

蒼銀の月の光。



青が繋ぐこの世界で

ゆらゆら‥ゆらゆら

ひとりぼっちで揺れてる、ピンク色のチューリップ。



私はまた、この中庭で独り膝を抱えるんだ。




ーーーーーーーー‥





「銀崎先輩♪」



……またアイツか。



「今日、学校休んだでしょ?具合悪いの?」



何故あんたはワタシに関わる?



「まただんまり‥ね」



話す事なんてないからね。



「もしかして怒ってる?キスした事」



ーーーーキス‥?


赤いベンチの右隣に座り、

半分しか出ていない私の顔を覗き込んだコイツ。




この青の世界で

1番 深い、紺色。



妖しく光るその瞳は、私の蒼をいとも容易く飲み込んでしまう。





「顔、あげて?」





まるで魔法にでもかかってるかのように

素直に身体が動いてしまう私。




私‥どうしたの?




頬を滑る指先。

大きな瞳を優しく細めながら微笑んだ、

少し幼さの残る綺麗な顔。





ゆ‥っくりと重なる唇。



ついばむように

角度を変えて


何度も何度もーー‥



「口、開けて」



言われるがままに
口を半分開いた私。


そこから入って来たのはーー‥



「ん‥は」

「やっと声出した」



苦しくなったことで出た声。

ふっと頭が戻り、恥ずかしくなって顔を逸らす。



「真っ赤になっちゃって。かーわいー」



その瞬間、ふわっと視界が回り、背中が赤いベンチの座面についた。




上から私を見下ろす紺色の瞳は、とてもとても色っぽくて‥

身体の中がゾクゾクする気がしたの。





「俺のモノになるんだよね?」





耳元でそう囁いた彼は、首筋に顔を埋めて舌を這わす。



動かないワタシの身体。


コイツにココロを掴まれてしまって、身動きがとれないの。



完全に闇に飲まれた

蒼い空。



光を蓄えたはずの
月は雲に覆われた。





光よりも


闇の方が勝ると




そう‥言っている
気がしたんだ。




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