ますかれーど



ーーーーーーー‥






パタン‥




背後で閉まるドアの音。

1人残った洗面所。







離れない。

アイツのあの顔が‥




「くそっ!」



ガンッ!



「くそっ」



ガンッ



「心‥っ」



やり切れない想いは壁にぶつけることしか出来なくてーー‥


俺は壁に額をつけながら、下手で壁を殴る。



「くそぅーー‥」



なんなんだよ俺。

俺には何も出来ねぇのか?


アイツに何が起こってる?



レイは何も喋ろうとしない。

「心が話してないなら私も言わない」って。




俺には言えねぇのかよっ!!


ガンッッ!!!



「ーーっく‥」





5歳も離れてると、学校なんてまったくのすれ違いだし。

だから、アイツがあの蒼い瞳の所為でいじめられてた時も、

ボールが顔に当たって腫れて帰って来た時も、


何も、何も出来なかった。



ただ、その綺麗な顔に笑顔を塗って、俺には気丈に振る舞って見せる。



詳細を聞くのは、いつも事後。




俺は、アイツにあの顔をさせたまま‥

ただ黙って見てることしか出来なくて。




何も‥出来なくて。






9月生まれのアイツ。

レイより6ヶ月も早く生まれてきたアイツ。



俺の、大事な妹だ。




“兄貴”としての威厳は皆無だけど、


でも、心配くらいさせてくれ。



相談にくらい、乗らせてくれよーー‥





ほら。


こうしてまた、アイツの事で頭がいっぱいになる。

放っとけなくなるんだ。





なぁ、俺じゃ頼りないか?

なぁ、お前に何が起きてる?







ーーーー‥男、か?


キスマークだけじゃなく、あんな歯型までつけるようなやつ。


誰だ?


アイツにどこまで手をつけた?




それを考えるだけで、俺の中はグツグツイライラしてる。

レイが彼氏を連れてきた時は、こんなんなかったのにな。



まぁ、あのレイだからな。



「あ゙あ゙っっ!!」



俺は半ば絶叫しながら、洗面台のシャワーで頭から水をかぶった。




冷たい水が、頬をつたって流れてゆく。




俺のこのやり切れないもどかしさも、

イライラも、



全部、全部、全部、


一緒に流れてしまえば良いのにーー‥
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