ますかれーど
ーーガッターンッ!



鳥のさえずりと、夏へと向かうお日様とで若干 目が覚めかけていた私は、1階でした、衝突音みたいなので完全に覚醒した。



「どうしたんだろ」



あの2人は穏やかな部類だから、滅多にそんな大きな音なんて出さないのに。


階段をかけ下りると、リビングのドアが開いていた。



「どうしたの?」



ドアを入って右のダイニングにいたお母さんは、口に手を当てて、その大きな真っ黒い瞳を見開いていた。


そのお母さんの表情にも驚いたけど、すぐさまリビングに瞳を向けるとーー‥



「これで良い」

「そうですか」



右に拳を作り、誰かを見下ろしているお父さん。

それにーー‥



「蒼さんって、意外と喧嘩 強いんですね」



左頬を押さえながらゆっくりと立ち上がった、青混じりの真っ黒な髪をした男の子。



「ーー‥え」

「あれ?おはよ♪」



綺麗な顔を無邪気に崩して、私に朝の挨拶をする彼。



「なんで‥居るの?ってか、なんで殴られてるの?」



お父さんって、人‥殴れるんだ。

お父さんがそんなに感情を出したってコト?


なんで?


私の頭は朝からハテナでいっぱいだよ。



「迎えに来たの♪」



んー?迎えに来ただけで、お父さんが人を殴るとは思えないんだけどな‥。



「魅」



相変わらずお母さんを名前で呼ぶお父さん。



「あ、あぁ!制服を持ってきてくれたのよ」



そう言いながら、袋に入った私の制服を差し出すお母さん。


ーー‥え?あっ!!
これ、昨日 麗花の家で着替えたやつ‥。

なんでーー‥?



「違いますよ。それは、玄関の前に置いてあっただけです」



玄関の前に‥?


制服を受け取った私。きゅっと胸に抱えた時にした、この落ち着く香り……



「くろ‥と?」



心臓が、ドキドキを加速し始める。

すると、いきなり腕を掴まれた私。



「蒼さん、ちょっとお借りします」

「わかってんだろうな?」

「わかってます」



そんな、意味不明の会話を耳にしながら、腕を引っ張られて階段を登っていく。



「ねぇ、部屋どこ?」



いくつかある2階のドア。その1番奥を開けて入った私たち。


パタン‥
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