坂井家の事情
「あー、そいつは無理だな」

大輔が右手を左右にパタパタと振った。

「だってコイツ、今まで一勝もしたことがないんだぜ。……0勝55敗だっけ?」

「いや、57敗だ」

圭吾は手帳も見ずに答える。

「なんだ坂井は、一度も向島に勝てたことがないのか」

そう言いながら口端を上げる綾子を見た悠太は、途端に不機嫌な顔付きになった。

彼女に向かって反論しようと口を開きかけた丁度その時、室内に設置されているスピーカーから馴染みのあるメロディが流れてくる。

「あ! 休み時間、終わっちまったじゃないか!」

綾子が悠太よりも先に叫んでいた。
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