坂井家の事情
「ずっと無駄話ばかりしているから、ぜんぜん作業が捗らなかっただろうが。お前らに頼んだあたしが馬鹿だったよ」

嘆くように額を押さえると、深々と溜め息を吐く綾子。

「シバセンだって話に加わっていたじゃん」と悠太は文句を言いかけたのだが、その前に彼女が勢いよく顔を上げた。

「仕方がないからお前らは、もう教室へ戻れ」

彼女は圭吾が持ってきたノートの山を抱えると、急き立てるように3人を出入口まで促した。

「あ、そうだ湯原、これ返すぞ」

廊下に出たところで綾子は、厚みのない本を2冊手渡した。反射的に受け取った大輔が表紙を確認すると、授業中に取り上げられた雑誌だった。

「また同じことをしたら今度こそ、本当に没収するからな」

更に強い口調で「次の授業には遅れるなよ」と念押ししながら、綾子は背を向けてそのまま歩き出した。
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