恋花~桜~
思わず彼女と目が合った。今まで目を合わせないように見ていた保科さんと、ばっちり目が合ってしまった。固まる俺に対し、保科さんは軽く笑顔を見せた。

《な、なんで保科さんがここにいるんだ!?》

俺はドキドキして、声が出なかった。

二人だけの教室…このシチュエーションに舞い上がるどころか、俺はパニック寸前になった。

《か、帰らなきゃ。早く帰ろうっと》

保科さんから視線を外した俺は、プリントを乱暴に鞄に放り込んだ。

すると、

「ねぇ、高田君?」

唐突に名前を呼ばれた。

《えっ?》

まさか保科さんが自分の名前を口にするとは思わなかった。今まで挨拶もまともにしたことがないのだから。

「な…なに?」

驚いた俺は、思わずぶっきらぼうに答えてしまった。

《せっかく保科さんと二人っきりで話すチャンスなのに…言ってんだよ俺!?》

俺が戸惑っているのを察したのか、

「ごめんね、急に話しかけちゃって」

保科さんは両手を口の前で合わせて【ゴメンネ】のポーズをした。その仕草はあまりにもチャーミングだ。

「いや…そんなことないから…さ」

《ちょっとびっくりしただけだよ》

そんなことは言えなかった。

せっかく話しかけてもらってるのに、まるで俺が迷惑してるような雰囲気になっている。決してそんなことないのに。本当は飛び上がるほど嬉しいはずなのに。

《相変わらず女に免疫ないな、俺は…》

素直に表現できない自分が歯がゆかった。そんな俺とは違い、保科さんは意外なことを口にした。





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