≡イコール 〜守護する者『霊視2』より〜

引力

光の柱が消えた瞬間、オレはガラス張りの自動ドアを、人の身体一つ通れるくらい開いた所だった。そこからすかさず建物の中に入り込んだ。


光が消えると、コマ送りのように動いていた人たちは、皆通常の動作を取り戻していた。


もちろん、石油に引火した火も勢いよく伸びてきた。


オレは、ドア近くに居た女子高生2人を扉の隙間から1人ずつ外に出した。


2人はすぐさま、消防士に身柄を確保され、安全な場所へと移動した。

同時に消防隊の消火活動が行われたが、火の勢いはすぐにはおさまらないでいた。炎は入り口側と建物の奥側を隔てるように燃えていた。


その時、パッッと建物内の電気が点いた。


ようやく裏口を誰かが突破したのだろう。

やっと、電気が復旧したのだ。


日村先生は絵里香ちゃんの身体を支え、ちょうどエレベーターの近くへ移動させていた。


絵里香ちゃんは、フラフラしながらもなんとか歩いていたが、途中手に抱えていた、緑色の本を床に落とした。


しかし、その本を落とした事さえ、絵里香ちゃんは気付いていないようだった。


光が消えてから、火は更にもの凄い勢いで石油の道を辿り伸び出していた。


奥の方には、先程石油を撒いた男がボーッと突っ立っていた。


よく見ると、その後ろには、空になって横倒しにしてあるポリタンクと、まだ未使用のポリタンクがもう1つあった。


オレは焦った。


アレに引火したら・・爆発する・・・!


オレは、パッと建物を見回した。


すると、ちょうど先生達に近い場所のエレベーターが、たった今復旧した電気により2つとも同時に開いた。

このビルの地下は駐車場になっている。


あの絵里香ちゃんの動きでは、爆発に間に合わない。


だったら、エレベーターが動作している間に地下に行く方が助かる可能性が高い。


オレは、先生と絵里香ちゃんの元へ走った。



「先生!!あのタンクに引火したら爆発しますっっ!!

エレベーターで地下に行く方が早いですっ!」
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