狂愛ゴング




気がついたら、食べかけのお弁当箱を手にして走りだしていた。

……な、なんだったんだ今のは……!
夢? 白昼夢でも見てたのか? え? え?

全力疾走して自分の教室に向かう。パニックでなんかもうわけがわからない!


「あ、澄早かったねー。ランチデートはどうだったー? って、聞くまでもないかっ! ねー、澄」


教室に着いて、ゼーゼーと肩で息をしながら席に向かう私に、泰子がいつものごとく明るい声で思い切り私の背中を叩いた。

ガクン、と身体を前に倒して痛みに堪えながらゆっくり振り返る。


「……あ、うん」


痛いのに、泰子に文句1つも出てこない。
ちなみに私を放置したことにも文句を言いたかったのに。

私はなにをされたんだ。
私はなんでされたんだ。

なんでどうしてあいつはあんなことを……? あんな、あんな……。


——……思い出すとどうしても新庄の顔が思い浮かんでしまう。そして、触れた……唇の感触。


「どうしたの澄……顔、真っ赤だよ?」

「赤くない!」


赤くなってたまるかコノヤロウ!
クワ! と泰子に食い付く勢いで振り返った。

悔しい悔しい悔しい。

なんであんなことになってしまったのか。させてしまったのか。

もっともっともっっと……あの時に拒否する方法はあったはずなのに。 突き飛ばして帰ればよかったんだ。ひっぱたけばよかった。っていうかもう殺しちゃえばよかったんだ。あんなカス。

しかもなんで逃げてるんだよ私は! 一発殴ればよかった!
わた、私の……ファーストキス!
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