あたしの仮旦那は兄貴の親友
『何度言ったらわかるんだ!
美雪が何をどう言おうが…関係ない』

寝室であいつが怒鳴り声をあげている

あたしは寝室のドアを勢いよく開けると
あいつの背中に向かって飛びついた

あいつの腰にゴンっと額をぶつける

あいつのベルトの上に手を置くと
ぎゅっとあいつのシャツを掴んだ

「大好きだ…誠也
美雪さんのとこに行って欲しくない」

小さな声であたしは呟いた

涙が目に溢れて、頬に零れる

ずっと好きだったんだ

幼いころから
兄貴と一緒に笑っているあんたが
格好良くて憧れてた

そっとあたしの手に
あいつが手を重ね合わせてくれる

「もう話すことはないから
電話もメールもしないでくれ」

何かを言っている美雪さんの言葉を遮って
あいつが一方的に話を区切ると
通話を切って
携帯をベッドに投げた

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