あたしの仮旦那は兄貴の親友
「花音!」

ホスト用のスーツを着ている兄貴が
理科室に飛び込んできた

小さく丸まっている花音に抱きつくと
怪我はないか
痛いところはないかと聞いていた

ああ、兄貴は花音を愛しているんだなあ
って傍目から見ててもわかる

「え? 仕事は?」

花音が目を丸くして
驚いている

「花音が閉じ込められたのに
仕事なんてしてられるかよ」

兄貴がぎゅうっと花音を
抱きして閉めているのをじっと見ながら
あたしひょこっと顔を出した

「兄貴に連絡しちゃった」

「木下さん、大丈夫?」

あいつの教科担当が理科で良かったよ
職員室にわざわざいかなくても
あいつ個人で鍵を所有しているからさ

学校側に怪しまれることなく
花音を助けられる

「どうして久我先生がいるんですか?」

花音が不思議そうな顔をして
あいつを見ながら質問してきた

あいつは困ったように苦笑した
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