あたしの仮旦那は兄貴の親友
「最後にキスしてもいい?」

玄関に立つ誠也が
寂しそうに微笑んだ

「いいよ
しばらくできないからね」

「寂しいなあ」

誠也が靴をはいたあたしをぎゅうっと抱きしめる

「行かないでって言ったら
アパートを引き払ってくれる?」

「無理! だって契約しちゃったし」

「…もうっ、果恋は現実派だな…」

誠也があたしの頬に手をそえると
ちゅっと軽くキスをした

あたしたちは離れる

あたしが笑うと
誠也も笑顔を見せてくれた

「じゃあ、久我先生…学校で」

「ああ、海堂さん
宿題を忘れるなよ」

「もちろん」

あたしはもう一度鞄を肩にかけなおすと
誠也に…いや、久我先生に背を向けた

じゃあ…またね
久我先生

卒業したらたくさん愛し合おうね

あたしは久我先生の家の玄関を
後にした

しばらく来ることのない久我先生の家

振り返ると
閉まるドアの隙間から久我先生を見た

「バイバイ、誠也」

あたしはありったけの笑顔を
誠也に見せた
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