あたしの仮旦那は兄貴の親友
あたしはくすっと笑うと
「そうだな」と答えた

「じゃあな」

「ああ、高校卒業したらすぐに僕のとこにお嫁にきてね」

「なに、それ」

ぷっとあたしは吹き出すと
肩を揺らして笑った

別れるわけじゃない

あたしたちには未来がある

あたしは旅行鞄を肩にかけると
玄関に向かった

この旅行鞄に入っている荷物が最後の荷物だ

これを持って
あたしはこの家を出ていく

ここには久我誠也が一人で住む

あたしは初めての一人暮らしをするんだ

学校の近くにあるアパートを借りて
残りの高校生活を
そこで暮らすと決めた

本当は兄貴のところに戻ろうと思ったんだけど

兄貴に拒否られた

花音と半同棲生活をしているから嫌だと

なら
一度やってみたかった一人暮らしを
経験してみようと思ったんだ
< 117 / 125 >

この作品をシェア

pagetop