パステルクレヨン
「早瀬、家まで送っていこうか?」
「え…?」
帰り。
図書館から近いあたしの家は、玉置やヒカルくんの帰り道の途中。
いつも、ついでみたいに玉置が送ってくれるけど、ヒカルくんが送っていこうかと言った。
「あ、大丈夫だよ。近いし」
「あーでも俺もさ、どっちにしろ通っちゃうから。送るってことに、しといてよ」
「あ、そうだよね。じゃあ…アリガト」
チャリを押すヒカルくんの横を歩きながら思う。
ヒカルくんは、確かに女の子にモテる。
それは、分かる気がする。
だって、ヒカルくんは、女の子の気にする小さなことにも気が回るし、喜ぶ言葉も知ってる。
だけど、それはあたしが思う『人間の魅力』じゃない気がして。
…難しいな。
あたしは隣を歩くヒカルくんにバレないように、小さなため息を1つついた。