パステルクレヨン



「早瀬は、もうお見通しなんだな」



玉置が髪をさわりながら、照れくさそうに笑う。



そして――


「ありがとう。 本音、大事にするわ」



そう笑ってあたしたちは手を振った。



玉置には、全てが上手くいってほしい。


どんな時でも、幸せでいてほしい。



…なんて玉置に言ったら、「すごいプレッシャー」とか言って苦笑いすると思うけど


本当にそう思うの。



離れてく背中が、あのハネた後ろ髪が、ちょっと癖のある歩き方が


泣きたくなるくらい、全部、ぜんぶ愛しいんだ。



「――玉置なら、大丈夫だよ」



小さくなっていく背中に、あたしは念じるように呟いた。



伝わるよ、玉置の今までの努力が。



大切にしてきた気持ちが。






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