ブラッド・チキン
ソレは日常生活がものすごく不便なわけじゃない。
現に家族以外の誰にも気づかれてない。

でも、たまに感じる疎外感。
たまに感じる他人とのズレがたまらなく嫌だった。

「この花はいい香りがする」
「納豆は匂いがキツイけど美味しい食べ物」

ここまではなんとか想像出来ても

「水は無臭やのに、海にも雨にも香りがあるらしい」

「・・・俺、お前の体臭、めっちゃ好きやわ・・・」


セックスの時に胸に顔をうずめて呟いた朝日の一言。
その時、僕は嗅覚がないことが初めてスゲェくやしいと思った。

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