胡蝶蘭
「また風邪ひかれたら困るからな。」



言い訳がましい台詞を言いながら、偉槻はダウンを脱ぐ。



そして、誓耶に着せ掛ける。



誓耶は驚いたように偉槻を見上げた。



「いいよ。」


「いい、着とけ。」


「偉槻が寒い。」


「お前に心配されるいわれはない。
そんな脚露出して。」



誓耶はそこを突かれると、ぐっと詰まって大人しくダウンの袖を通した。



それを見届けた偉槻は満足そうに前を向く。



「ありがと。」



小さな声で囁かれた感謝の言葉。



偉槻は内心驚いたが、ぶっきらぼうに「ん。」とだけ返した。






















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