胡蝶蘭
「あーあ、大神は偉槻かぁ。」
「今度こそ覚えとけよ。」
俺がお前を覚えてんのにお前が俺を忘れてるなんて我慢ならない。
「努力しますよ。」
本気かどうかわからない怪しい返事を返し、誓耶が寝転がる。
「お前、慣れすぎだ。」
「いいじゃん。
家出先が一個増えた。」
よっしゃ、と誓耶が指を鳴らす。
「よっしゃ、じゃねーよ。」
「あたたた。」
起き上がった頭を押し戻す。
誓耶は呆気なく倒れた。
「そうそう家出なんかするなよ?」
「じゃああんたがあたしと代わってくれよ。」
「…無理だ。」
偉槻は気まずくなってコーヒーを飲んだ。
誓耶の皮肉っぽくない口調が余計に罪悪感を膨れあがらせる。
「慎吾は何も言わないのか?」
「何を?」
「従兄のこと。」
ああ、と誓耶は無表情に戻った。
「言ってないもん。
一回話した時の反応が怖くて、もう触れてない。」
だから、匡から逃げたとき、慎吾の家には行きたくないと言う。
「今度こそ覚えとけよ。」
俺がお前を覚えてんのにお前が俺を忘れてるなんて我慢ならない。
「努力しますよ。」
本気かどうかわからない怪しい返事を返し、誓耶が寝転がる。
「お前、慣れすぎだ。」
「いいじゃん。
家出先が一個増えた。」
よっしゃ、と誓耶が指を鳴らす。
「よっしゃ、じゃねーよ。」
「あたたた。」
起き上がった頭を押し戻す。
誓耶は呆気なく倒れた。
「そうそう家出なんかするなよ?」
「じゃああんたがあたしと代わってくれよ。」
「…無理だ。」
偉槻は気まずくなってコーヒーを飲んだ。
誓耶の皮肉っぽくない口調が余計に罪悪感を膨れあがらせる。
「慎吾は何も言わないのか?」
「何を?」
「従兄のこと。」
ああ、と誓耶は無表情に戻った。
「言ってないもん。
一回話した時の反応が怖くて、もう触れてない。」
だから、匡から逃げたとき、慎吾の家には行きたくないと言う。