胡蝶蘭
「だから、悪いけどあんたの家泊めて?」


「…好きにしろ。」



拒めるものではない。



ただの家出少女ならどんだけ楽だろう。



「見返りにあたしのカラダ、あげてもいいよ?」



ふふん、と自嘲気味に笑う誓耶を叩いた。



「そんなこと言うな。
何されても文句言えない状況で、そんな冗談聞いてられるほど男は我慢強くないんだぞ。」



ホントに、気の短い男だったらどうするつもりだよ。



「だいたい、抱かれるのが嫌で逃げてきてんのに同じことをされたいのか?」


「偉槻ならいいよ。」


「…そんな冗談言うな。
俺はいいなんて言って、ほいほい身体を預けるな。」


「…はーい。」



聞いてんのか?



ちゃんとわかってんのか?



自分の危なっかしさを少しは自覚してほしい。



もし、タイミングと人が悪けりゃ、こんな小娘一発でアウトだってのに。



「頼むから言動には気をつけろ。」


「偉槻が助けてくれるんだろ。」


「お前、俺をなんだと思ってんだ。」


「ガードマン。」



……。



「…閉め出すぞこらぁ。」



顔を歪めて誓耶はぷいっとそっぽを向く。



ったく、こいつは…。



偉槻の言葉を真剣に受け止めてくれてることを祈るしかない。





















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