胡蝶蘭
ココロ ツナグ オンガク
夜。
運送の仕事が終わってから、偉槻は社長に鍵を借りた。
「久し振りだな、お前が鍵貸せって言ってくるのは。」
「すいません。」
「謝んなよ。
ま、散々騒げや。」
店長と同じ、厳つい顔がにっと笑った。
偉槻はぺこっと頭を下げる。
「すぐに田中達もくるのか?」
「はい、来るって言ってたんすけどね。」
あいつ、約束の時間に遅れるのは得意なんだよな。
「あ、来たぞ。
おお、今日はメンバー全員集合か?」
「…みたいっす。」
最近、仲間全員で集まることなんかなかった。
仕事やらでみんなの時間があわない。
今日は珍しく、久々の再開が叶った。
「偉槻、待たせたな。」
一番仲のいい健(タケル)。
同い年で、気が合う。
かと言って、密に連絡をとっているわけでもない。
長い空白も、俺達の間には何の意味もない。
ただ、昨日も会ったかのように健は笑う。
偉槻も笑って肩を叩いた。
健はがっちりと偉槻の肩を抱き返してから、背負ったギターを置いた。