胡蝶蘭
「斉木ぃ…。」


「おい、誓耶、上着!」



素知らぬ顔で、斉木は誓耶を呼ぶ。



…いつの間に親しくなってんだよ。



どうせ、誓耶が中に走って行ったときだと見当はついた。



まったく、こいつはもう。



「サンキュ。」



ダウンを放り投げると、誓耶はそれを危なげなくキャッチした。



「帰るぞ。」


「おいおい、礼はなしかよ。」


「煩い。」


「おい、ちょっと偉槻。」



なんだ、と振り返ると、太い腕に引きずられた。



「あの嬢ちゃん、お前の女?」


「だから、違うって。」


「嘘つけ。
かぁわいいなぁ、お前が出てったあと、悪いなって言いに戻ってきたぜぇ?」



お前も見習うんだな、と斉木は一度偉槻をきつく締め上げた。



…息が止まる!



肘鉄を繰り出して斉木の腕から抜け出し、誓耶のもとへ戻る。



今度は堀川と親しげに話していた。



「おい、帰るぞ。」


「はいよ。」



じゃね、と堀川に手を振ると、誓耶は偉槻のあとをついてきた。



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