胡蝶蘭
Four.

ホンモノ ノ コイビト








誓耶は軽快に、錆びた階段を駆け上がった。



一つの扉の前で立ち止まり、約束したリズムでドアをノックする。



すぐに偉槻が顔を出した。



「来ると思った。」


「毎日来てるじゃん。」


「だから、今日も来ると思ったんだよ。」



入れ、と偉槻はドアを開け放した。



お邪魔します、と言って上がると、偉槻は「邪魔だとわかってんなら帰れ。」と素っ気ない。



いつものことなので、誓耶は反応せずに靴を脱いだ。



「偉槻、今日も泊まっていい?」


「駄目だ。」


「なんでだよ。」


「こないだも泊まってっただろ。
さすがに叔父さん心配すっぞ。」



誓耶はぷいっとそっぽを向いた。



「しないよ。」



おい、と偉槻の声が叱るように尖った。



誓耶は顔を背けたまま座る。



「お前、自暴自棄になるんじゃねーよ。
いくら仲が悪くても、叔父は叔父だ。」


「知らない。」


「誓耶。」



とうとう、偉槻が声を荒げた。




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