胡蝶蘭
まったく、こいつは。



こっちが心配になってくる。



「どっか座って、飲み物でも買って話してようよ。」


「はいはい。
誓耶はいっつもそれだ。」



おどけて見せて、慎吾は先に立って歩き出した。



誓耶も微笑んで後を追う。



「今日は俺が奢ってやるよ。」


「え、いつもじゃん。」


「そうだったか?
まぁ、いいや。
今日も買ってやるよ。」



一度だって、あたしがこいつにものを買ってやったことがあっただろうか。



お小遣いだって、一応もらってるのに、いつも慎吾はあたしに金を出させようとはしない。



隣を歩きながら、誓耶は慎吾を見上げた。



「何?」



慎吾は優しく微笑む。



誓耶は唇を尖らせて前を向いた。



結局今日も慎吾は誓耶に金を出させず、いつものシェークを買って、フードコートの一角に座った。



「なんかいいことあった?」


「別にないな。」


「仕事は?
順調?」



はしゃいだ返事が聞けるかと思ったが、慎吾はうーんと唸った。



「何かあったのか?」



心配気になった誓耶を落ち着かせるように笑って、慎吾は首を振った。



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