胡蝶蘭
「ベッドの中ではもっと言うよ。
いっぱいキスもしてくるし。」



茉理子は今や鬼のような形相で誓耶を睨んでいた。



このとき、誓耶はこの後茉理子がどういう行動をとるか予想すらしていなかった。



だから、次にもこんなことが言えたのだ。



「あんたのときは、どうだった?」


「…あんたが、偉槻の…。」


「そうだよ。
腹立たしいよね、こんな小娘に偉槻獲られて。」



どうして、と茉理子は何度もつぶやく。



「知らないよ、あたしが訊いても偉槻教えてくれないし。」


「あんたなんかよりあたしの方が…。」


「よっぽどいい女だって?
耳にタコだよ、どうせあたしはガサツなオトコオンナですよ。」



許さないから、と茉理子がほとんど聞き取れないような声でつぶやいた。



聞こえなかった誓耶は首を捻る。



茉理子は最後にもう一度誓耶を睨みつけると、踵を返して出ていった。



ふうっと誓耶はため息をついた。



一難去った。



…でも、あたし言いすぎたかなぁ。



思い返してみると、結構毒を吐いている。



でも、逆上してなかったから、いっか。



「嬢ちゃん、入るぞ。」


「あ、はいよ。」



外から店長の声がしたので、誓耶は自分で障子を開けた。



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