胡蝶蘭
猫かなんかか?



「誰かいるのか?」



声をかけると、物音が止んだ。



なんだ?



不審に思って偉槻が近づくと、物陰から何かが飛び出してきた。



うおっと声を上げてそれを避ける。



どうやらそれは人間で、駆けていくシルエットからして男。



…なんなんだ?



また嫌な胸騒ぎ。



偉槻は震える足を踏ん張って立ち上がり、前に進んだ。



頼む、あたってくれるな俺の予感。



頼む…。



しかし願いも虚しく、そこにいたのは探していた人物。



「誓耶…。」



誓耶を呼ぶ自分の声は、情けなく震えていた。



身体が硬直して、指先さえ動かない。



誓耶は目を見開いて偉槻を見ていた。



大きく見開かれた目は、涙で光っている。



「お前…。」



言葉が見つからない。



偉槻は膝を折るようにして誓耶の前にしゃがみこんだ。



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