胡蝶蘭
そう返事をしたものの、誓耶は目を瞑らない。



偉槻は無理やりに、瞼を閉じさせた。



「お前、体力消耗してんだから。」


「うん。」



濡れた髪が少し冷たかったが、そんなこと構わない。



偉槻は誓耶の頭を抱いた。



「おやすみ。」



本当は眠かったのか、誓耶はすぐに身体の力を抜いた。



規則正しい寝息が聞こえ、安心する。



偉槻も眠ろうと思ったが、無理だった。



寝られねぇ。



目を瞑ると、誓耶の顔が浮かぶ。



恐怖に引きつった顔が、脳内に残っているようだ。



偉槻ははあっと大きなため息をつく。



今日は最悪な日だった。



どうして俺は今日、誓耶を呼び出したりしたんだろう。



やっぱ、原因は俺だよな。



悪い、誓耶。



お前は自分を嫌いになったか訊いてきたが、俺が訊きたい。



お前は俺を恨んでるか?



俺のせいでこんなことになったんだもんな。



これに比べれば、匡に恨まれるのなんてたかが知れてる。



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