胡蝶蘭
Five.

クノウ








偉槻はハッと目を覚ました。



また、誓耶の夢を見た。



あの日から、よくあいつの夢を見る。



もう、季節は春。



長い間誓耶に会っていないのに、記憶は鮮明だ。



居酒屋での誓耶の顔。



まだはっきりと覚えている。



ゴメンな、誓耶。



お前は悪くないのにな。



こうするしか方法がみつからなかった。



躊躇して別れようというメールを送らず、誓耶からの連絡を無視しつづけて。



結果、もっと彼女を困らせ、傷つけた。



こっちから突き放したくせに、考えるのは誓耶のことだった。



あいつ、もう立ち直ってんのかな。



ケータイが鳴って、メールの着信を告げた。



連絡するなと言ってから、誓耶は律儀になんの連絡も寄越さない。



自分でするなと言っておきながら、着信音を聞くたびに誓耶かと期待してしまう。



ガラじゃねぇ…。



俺はこんな女々しい奴だったか?



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