胡蝶蘭
「ほら、愛しの誓耶はこの通り目の前にいるぞ。」



偉槻は顔を歪めながらも、誓耶に手を伸ばした。



誓耶も遠慮なくその腕の中に飛び込む。



消毒の臭いがした。



「偉槻…!」



久々の感触。



偉槻の腕の中。



もう、何ヶ月触れられてなかったんだろう。



包帯で覆われた頭がすり寄せられる。



誓耶もぎゅっと抱きつき返した。



「ったく、こんなの見せつけられる俺のこともちっとは考えてほしいなぁ。」



偉槻はいつものこと、誓耶も今日はそんな言葉に構わなかった。



無心に偉槻に抱きつく。



「偉槻、無事でよかった…。」


「こっちの台詞だ…ッ。」


「誰の台詞でもなく俺の台詞だっつの。」



健が不貞腐れる。



「誓耶には先に言っといたけど、お前は水臭いんだよ。
今からたっぷり説教してやるからなこの馬鹿野郎。」



偉槻はげんなりした顔を見せたが、二人が通じ合っているのは一目瞭然だった。












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