胡蝶蘭

フクエン








「で、なんだ。
やっぱヨリ戻したってか?」



閉店後の居酒屋のカウンター。



偉槻と健は店長と一緒に酒を飲んでいた。



偉槻は気まずい思いをしながら頷く。



健は声を殺して笑った。



「ったく、なら最初っから下手なことすんなよ。
はなっから俺達を頼ってりゃこんなことにはならなかっただろうに。」


「すんません…。」


「っとに阿呆だなお前は。」



言いながら店長は偉槻の頭をわしゃわしゃと掻く。



「誓耶を苦しめただけだったよなぁ。」



偉槻はキッと健を睨む。



健は首をすくめただけで、流した。



「なぁ、相当悩んでたみたいだなぁ。
可哀想に、素直にお前の言いつけ守ってここにも寄りつかなかったし。」



ぐさり、とその言葉が偉槻を刺す。



「可哀想に、お前の勝手な言い分でおとなしく言う通りにしてくれて。」



またもやぐさり。



偉槻はせっかくタダで飲ませてもらっている酒が不味く感じた。



「まぁ、元凶の女も捕まってるわけだし、当分は悪さできねぇだろ。」


「やっとお前らに平和が訪れたわけだな。」



どうだか。



まだ誓耶の従兄が残ってる。



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