胡蝶蘭
しばらく入院していたので、久々の帰宅。
偉槻はアパートの鍵をガチャリと回した。
軋むドアの音を聞きながら、ああそういえばこの音を毎日聞いたっけかと思い出したり。
少し感慨深くなった。
部屋は換気をしていなかったからか、少し埃臭い。
偉槻は荷物をどさりと床に下して窓を全開にした。
ふうっと一息ついて、冷蔵庫から水を出す。
食料品を買い込まない性格が幸いして、中のものを選別する必要がないのが不幸中の幸いか。
ペットボトルのキャップをひねりながら、腰を下ろした。
少し前に誓耶にメールをしたら、すぐ行くと返事が返ってきた。
なのでもうそろそろつくだろう。
予想は裏切られず、いくらも待たずに誓耶はやってきた。
リズミカルにドアがノックされ、開いていると怒鳴るとすぐさま中に入ってきた。
「なんだ、用って。」
いつもの位置に腰を下ろすと、挨拶もそこそこにそう切り出した。
いつもなら偉槻も回りくどいことが嫌いなので誓耶のようにさっさと要件を切り出してくれれば楽でいいのだが、今日は提案が提案だけに、怯んだ。
「偉槻?」
押し黙っている偉槻を不思議に思ったのか、誓耶が偉槻を見る。
「どうした、さっさと話せよ。」
「あ、いや…。」
「なんだよ。」