胡蝶蘭
「で?
息巻いてた誰かさんはどうしてこんなに静かなのかな?」
フードコートでたこ焼きをつつきながら、慎吾は薄ら笑いを浮かべていた。
対する誓耶は仏頂面。
「なんだよぉ。
たかがゲームで3連敗したくらいでへこむなよぉ。」
わざとだ。
こいつはわざと腹立つ言葉を選んでる。
証拠に、ぎろりと睨んでやるとサッと視線をそらされた。
やましい心だからだ。
「馬鹿野郎。」
「うっわ、女の子がそんな汚い言葉吐いてはイケマセンッ!」
「おちょくってんのかこの野郎!」
「だから、野郎はやめなさいって…。」
お母さん悲しいワ、ってあんたは女か。
だいたい、あんたに育てられた覚えはねぇよ。
誓耶は必要以上に力を込めて、たこ焼きに爪楊枝を突き刺した。
「おいおい、タコちゃんには罪はねぇだろ。
ってか、結局奢ってやってんだから、機嫌直せって。」
「やなこった。
気が済むまで拗ねてやる。」
こんなに負け続けるなんて思ってなかった。
正直ショックだ。
いくら慎吾がゲーセンの常連だからって、こんなに大敗を記すなんて。
泣けてくる。