胡蝶蘭
「まあ、とにかくお互いの利害の一致のために、組もう。」


「あんたがいいならあたしはいいけど。
で、条件って何?」


「必要以上に干渉しないこと。
実際に付き合ってるわけじゃないし、たまに付き合ってる素振りを見せつける程度に会う。
これくらいで十分なはずだ。」



偉槻は言いながら、靴を脱いで部屋に上がった。



そして誓耶を手招きする。



ここに上がるのは何度目だと思いながら、ありがたく上がらせてもらった。



「適当に座ってろ。」



言いながら、偉槻はどっかりと座る。



少し迷って、誓耶は偉槻の向かいに腰を下した。



「あと、ヤバそうになったらお互い速攻で逃げる。
お前の従兄が変な奴なのはもう俺もわかってるからな。
こっちの女も相当気が強そうだから、気をつけろ。」


「わかった。
たぶん、あたしその女はなんとかできると思うけど、あんたは本気で逃げろよ?」


「わかってる。
俺も面倒はゴメンだ。」




そう言う割には、こんな危ない契約交わしてるがな。



そこまでして追い払いたい女なんだろうか。



ふむ、と考えて、誓耶は慌てて頭を振った。



駄目だ、詮索しない約束だ。



「あとは?
条件、それだけか?」



誓耶が訊くと、偉槻は少し沈黙して考えた。



「ああ、それくらいだな。
あとは随時追加ってことで。」



なんだよ、終わりじゃないのかよ。



「あんまり多くなるとあたし覚えきれないからな。」



不機嫌に言い放つと、偉槻ははいはいと生返事を寄越した。



そして、さっさと話を進める。



「お互いのこと、最低理解しとかないと、あとあと不便だよな。」


「あ、あぁ。
そうだな。」





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