初恋の向こう側

「茉紘ちゃんは意地っ張りだから、なかなか本音は言わないよね。そこが彼女らしさでもあるんだけど。

でも時々、抱えすぎてるようで見ていてこっちが辛くなることがある。彼女のお母さんのこともあるしね……だから、」

「心配しないでください」


キッパリとそんなことを言った自分に、我ながら驚かされた。


「キミが守るってこと?」

「当然です」


意識的にではない。

けど、自然と睨みつけるみたいな目で見てしまった。


「キミがもし彼女のことを守ることができないなら」

「できないなら、なんすか?」

「俺も黙っていないよ」


逢坂さんの表情も、さっきまでとは違う。

汗をかいたグラスのせいでテーブルにできた小さな水たまりをじっと見てから目線を上げた。


「ヒロの事が好きなんですか?」

「今はまだ100%じゃないけどね」

「そんな中途半端な気持ちの人間にヒロは渡せません。

っていうか誰にも渡しませんよ。ヒロのことは」

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