初恋の向こう側
「それにしても妬けたよ。
茉紘ちゃん、俺と会ってる時にするのは九割がたキミの話なんだから」
「どうせ悪口ばかりでしょ」
「あははっ 確かに。
でも文句を言いながらキミの名前ばかり繰り返してた。カナダにいる時もいつも」
「……」
「三年前に初めて会った時からずっとだよ」
その一言が俺の中の何かに火をつけ、覚醒していたもの達が目覚めだした。
初めて顔を合わせた日、もじもじと母さんの後ろに隠れてる俺に『よろしく』って笑った五歳のヒロ。
土にまみれになって一緒に遊んだ日々。
ベランダに並んで座って食べたスイカの味や、少ない雪で無理矢理作った雪だるまのブサイクな顔。
イジメっ子に立ち向かう勇敢な女の子。
いつも俺の部屋で宿題をまる写ししてた姿。
『転校するの』って告げられたあの日。
引っ越し当日、去って行く車の中で振り返ったヒロが悲しい顔を見せたあの瞬間。
そして再会 。
外見が大人びても中身は変わんないヒロ。
素直じゃなくて、いつも俺も惑わせるヒロ。
大好きなヒロ ──