妖恋華
――スッと襖が開いた。
出て来たのは乙姫で華紅夜は座布団に座ったままそれを見送っていた。
ちょうどその時、青が一食分の朝食を乗せたお盆を手に、部屋の前まで来ており乙姫と視線が重なった。
乙姫は苦い笑いを浮かべて青の横を通り過ぎた。
その表情からも自分の考えが的中していたと直感した。
「華紅夜様。朝食です。」
一言伝えて室内に足を踏み入れる。
「ありがとう。……それから、乙姫は『御伽学園』へ通わせます。」
「それは……」
「乙姫も了承しました。」
「…そうですか。」
あいつは了承したのか…いや了承せざるを得なかったのか―――。
どちらにせよ決まったことか――。
「乙姫を頼むわね。」
華紅夜に言われた一言。
その意味はもっと深いところにあり、青はその真意を正確に読み取った。
しかし、それは青にとっては容易に納得できるものではなく、“失礼します。”と一言だけ告げ、襖を静かに閉めたのだった。