木苺の棘
私が左手を漣に差し出すと
貴方は、リングケースから
リングを取り、私の薬指に
ゆっくり、嵌めてくれた。

静寂の中・・・

その指に、そのリングに
貴方は口づける。

今度は、私が漣の左手
薬指に指輪を嵌める。

「手が、震える・・・」

震えるのは手だけじゃない

全身に鳥肌が立ち
体が、心が震える。

だって、漣が
あの、たまき先輩が
私だけのものになる瞬間。

涙で潤んで、視界が歪む。

漣の薬指に、落ちた
一粒の雫。

その涙は、リングを
より一層、輝かせる・・・

「感動、しちゃった」

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