自伝

プライド

「もしもし?」


「俺」


「どうしたの?」


「明日春陽の運動会だろ?」


「なんで?」


「いや…明日このまま、福島に行かなきゃ行けないんだ」


「大丈夫よ…運動会はまだ先だから」


「そうか!良かった」

どうせ来ないんだし

そう思って


嘘を付いた


電話を切り、明日のお弁当の準備を始める。


「おにぎりと…おかずを何にしようかな」


ガチャガチャ


「!?」


石井さん…


「福島行くんじゃなかったの?」


「行くよ、行く前に綾の顔見ておこうと思ってさ」


ホッとした


「服、脱げよ」


「何言ってるの?」


「春陽、寝てるんだろ」


「でも…」


嫌だった


たまらなく嫌だ


強引に倒された


気持ち悪い…


たまらなく気持ち悪い


満足した石井さんは泊まりの支度をして福島へ向かった。


携帯が鳴ってる


「はい…」


「奥さんでしょ」


「あぁ…あなたが『愛人』?」


「愛人じゃないわよ」

「じゃあなんなの?」

「明日…彼、私の親と会うのそれってどういう意味かわかるわよね」


「さぁ…現に今の彼の奥さんは私だから」


愛してるとかじゃなくて


悔しかった。


ただ、それだけだった
< 181 / 284 >

この作品をシェア

pagetop