四十六億年の記憶


 あの人とは付き合っていない。これだけははっきり言える。
年上、かどうかはわからないが多分そうだ。茶髪、は染めてないだろうな。あの人の目は外国の人みたいな青色だから。
 ああ、こんな話をしているから男子生徒まで来たじゃないか。にやにやしながら「お前に彼氏とかばり意外~。男に興味ありませーんみたいな顔してんのに」とか「誰誰誰?どこ高?おれらの知ってるやつ?」とか、後でネタにする気でいっぱいの質問をしてくる。
 さっきから少しずつ失礼な発言が混ざっているような気がするのはわたしの気のせいではない筈だ。


 「おいお前ら!始業のチャイムはとっくに鳴ったぞ!」
教師が怒鳴って、ようやくわたしは質問攻めから解放された。
 いつものようにぼんやりと授業を聞いていたら、隣の席から紙が飛んできた。
紙を投げた本人は平然と黒板の内容をノートに写していた。
(大丈夫?大変だったね、質問攻め。お弁当は教室で食べられなさそうだね。今日は天気もいいし中庭でも行く?)
隣の席の、この学校唯一と言ってもいい友人の投げた紙にはそう書いてあった。
友人はありがたいことに、こういう時の気遣いが上手いのだ。



















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