お前に捧げる景色
「あぁ、退屈だ」

敢えて声を出して呟いてみる。

「それなら勉強でもしなさい。もうカナだって中学生なんだから」


台所からお母さんの落胆に似た声がする。

はぁい、と相槌を打ちながら、渋々と立ち上がる。

「将来の夢の為に、努力を惜しんだらダメよ。夢は叶うの」

続いて古臭いお母さんの【名言】。

「私は平凡な暮らしが変わるんならそれでいいのぉ」

はいはい、と今度はお母さんが相槌を打った。

部屋を出る時に、お母さんの横顔を見る。

目尻にはシワが寄り、顎のラインは二重。髪の毛は年の割に白色が目立つ。
首から下に視線を落とすと、これもまた悲惨だった。

「何見てんのよ、気持ち悪い」

私の視線に気付いたお母さんと目が合う。

「いや、気のせいかなぁ」
と、首を捻った。

「何よ」

「いや・・・・・・老けたなって思っただけ」



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