かけがえのないキミへ


あれからかなりの時間が過ぎた。
だけど俺は気持ちを伝えていない。

買ったときは冷えていたミルクティーが、今は俺の体温で温められて、少しぬるくなっている。

缶をくるくると回しながら、綾音のことを考えていた。



『ちょっといい?』


すると誰かに声をかけられた。
上を見上げると、サングラスをかけて、明るい茶色の髪の毛に、細身の体をした、男の人がいた。

サングラス越しから見える瞳がとても綺麗で、つい見とれてしまった。


『お、俺?』


戸惑いながら自分を指さす。


『うん。今暇?』


『…あ…えっと…はい』

さっき竜也に学校休むと言ってしまったから、特にやることもない。

なにかの勧誘か?


『手伝って欲しいんだ』

こう言って、彼はサングラスを外した。
彼の顔を見た瞬間、体中に電気が走る。


完全に、彼の瞳に吸い込まれていった。



< 252 / 370 >

この作品をシェア

pagetop