かけがえのないキミへ

綾音の母親は、ゆっくりと昔起こった出来事を話していく。
まるで俺は母親になったかのように、その話に入り込んでいった─…



…私達は、海がよく見える田舎で仲良く三人で暮らしていた。
のどかな町で、私は好きだった。
綾音を産んだのは、私が24になる直前のこと。
綾音が生まれてから、私の幸せは一気に倍増した。


だけど、その幸せも長くは続かなかった。


『お前、早く働けよ』


結婚する前は、とても優しかった夫が、綾音が生まれてたころから、態度が豹変し、仕事すら行かなくなった。


今じゃ、この家には『愛』なんて言葉はないに等しい。


でも綾音がいるから辛くはなかった。
ミルクやご飯をあげるたび、笑ってくれる綾音の姿を見るだけで、私は幸せだった。


いつか、前の優しい夫に戻ると、信じていたのに…そんな願いは神様には届かなかった…



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